ヴェルター湖 (オーストリア)

2023.10.05

ヴェルター湖 (オーストリア)

ブラームスが生まれ育ったドイツのハンブルクで7年ほど暮らした私にとって、ブラームスは特別な作曲家であり、ブラームスを聞くとドイツ・オーストリアの街並みや風景が次々と思い浮かんできます。

中でも交響曲第2番、バイオリン協奏曲、バイオリン・ソナタ第1番は、昔から特に好きな曲だったのですが、これらの曲がオーストリア南部にあるヴェルター湖畔のペルチャッハという街で書かれたことを知った私は、ブラームスはどれほど美しい風景を見てこれらの曲を書いたのか、どうしても自分の目で見たくなり、イタリア、スロベニアとの国境にほど近い、片田舎のその小さな湖と街を訪問しました。写真はその時に撮影したヴェルター湖です。

ブラームスが1877年、1878年、1879年と続けて3度の夏を過ごしたペルチャッハは、今も避暑地として地元の観光客で賑わい、ブラームス国際コンクールの開催地にもなっているのですが、普段は街がブラームスを推している様子はあまり感じられず、観光案内所で聞いてもブラームスに関する有用な情報は得られなかったため、私が以前ある本で見つけてメモしておいた、ブラームスが滞在していた家の住所・番地を頼りにその場所に行ってみると、壁に”In diesem Hause wohnte und wirkte 1877 Johannes Brahms”(=ブラームスは1877年にこの家に住み仕事をした) と書かれた家にたどり着くことが出来ました。その家は今はペンションになっていて残念ながら中に入ることは出来ませんでしたが、その近くにあるブラームスが滞在したホテル、ブラームスが散歩したであろう湖畔の小川、美しいヴェルター湖の湖岸などを、ブラームスに思いを馳せながら散策しました。

ちなみに、同じくヴェルター湖畔の別の街・マイアーニックには、マーラーが交響曲第4番~第8番などを作曲した小屋があります。

山道を少し登った先の木々に囲まれたところにその小さな小屋があるのですが、そこでは、小屋の管理人さんと会話したり、リクエストに応じてマーラーの曲を流してもらえたりと、マーラーも大好きな私は、この上なく幸せな時間を過ごすことが出来ました。

ブラームスは友人に宛てた手紙に 「ヴェルター湖畔には美しい旋律が飛び交っているので、踏みつぶさないように気をつけなくては」 と書いたそうです。

また、その地で作曲された交響曲第2番を聞いた別の友人は 「この曲は、ただただ青い空、泉の揺らぎ、太陽のまぶしい輝き、涼しげな緑の木陰。ヴェルター湖畔ペルチャッハとは、どんなに美しいところだろう」 と言ったそうです。

今回のメインプログラムであるブラームスの交響曲第2番は、ヴェルター湖のそんな美しい風景を思いながら演奏したいと思います。

(1st Vn T.I.)