2026.05.14
⑥ハリウッド映画黄金期の香り漂うヴァイオリン協奏曲(5/13)
ジョン・ウィリアムズ作曲の『スター・ウォーズ』(1977年公開) は、AFI (アメリカ映画協会) がアメリカ映画100周年を記念して発表した「AFI’s 100 Years of Film Scores(史上最高の映画音楽)」で第1位に選ばれるなど、最も人気が高い作品の1つですが、その映画音楽史上最も有名な『スター・ウォーズ』のメインテーマにそっくりな曲があることをご存知でしょうか。
それは『Kings Row (邦題:嵐の青春)』(1942年公開) のメインテーマで、その作曲者は、今回演奏するヴァイオリン協奏曲の作曲者でもある、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトです。
オーストリア(当時)に生まれ、モーツァルトにあやかり“ヴォルフガング”と名付けられたコルンゴルトは、10代前半にして作曲の才能をグスタフ・マーラー、リヒャルト・シュトラウスらに絶賛され、「モーツァルトの再来」と呼ばれたほどの神童でした。
その後も、純音楽の作曲家としてヨーロッパで輝かしいキャリアを築いていたのですが、ユダヤ系だったため、第二次世界大戦期はナチスを逃れてアメリカへ渡り、ハリウッドで映画音楽に携わることになりました。
コルンゴルトらヨーロッパ出身の作曲家が、ワーグナーからマーラーに至るドイツ音楽の伝統と後期ロマン派の豊かな音楽語法をハリウッドに持ち込み、発展させたことで、大編成オーケストラによる重厚でドラマチックな「ハリウッド・サウンド」が確立し、1930年代から1950年代にかけて黄金期を築きました。
しかしその後、テレビの普及に伴う映画制作の予算削減、ジャズやロックなどのポピュラー音楽の台頭、シンセサイザー等の電子楽器の登場によって、その贅沢なシンフォニック・スタイルの映画音楽は“時代遅れのもの”として衰退してしまいました。
そんな時代に、1930-40年代の古典的なハリウッド・スタイルの音楽を求めていたジョージ・ルーカスは、スティーブン・スピルバーグの紹介でジョン・ウィリアムズと出会い、その2人の出会いから生まれた最初の作品が『スター・ウォーズ』でした。
そうした経緯を踏まえると、『スター・ウォーズ』が『Kings Row』とそっくりなのは決して偶然ではなく、『Kings Row』に限らずコルンゴルトが残した数々の映画音楽作品を聴くと、その華やかな旋律と豊かな響きがジョン・ウィリアムズに受け継がれていることがよく分かります。
そしてジョン・ウィリアムズによって、シンフォニック・スタイルの「ハリウッド・サウンド」は見事に復権し、新たな黄金期を迎えて今日に至ります。『スターウォーズ』は、ハリウッド映画音楽史に転換をもたらした重要な作品でもあるのです。
ちなみに『Kings Row』は、後にアメリカ合衆国大統領となるロナルド・レーガンが俳優として出演している点でも興味深い作品です。
今回演奏するコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲は映画音楽作品ではありませんが、実は全楽章にわたって、彼自身の4つの映画音楽の主題がほぼそのままの形で登場します。
第1楽章 『Another Dawn (砂漠の朝)』(1937年)、『Juarez (革命児フアレス)』(1939年)
第2楽章 『Anthony Adverse (風雲児アドヴァース)』(1936年)
第3楽章 『The Prince and The Pauper (放浪の王子)』(1937年))
1930年代のハリウッド黄金期の香りと、ヴァイオリンが奏でる極上のメロディを、ぜひ会場でお楽しみください。
※ 画像は “ハリウッド映画黄金期” のイメージでAIが作成したものです
(Vn TI)
