「第4楽章は?」

2023.03.18

「第4楽章は?」

今から40年以上も前のことですが、シューリヒト(元祖の方)がウィーン・フィルを振ったブルックナーの交響曲第9番のLPを中古で買いました。暗く重たい1楽章が心地よく響き、スリルある稜線の岩場歩きを彷彿させる2楽章(時々雪崩だか落石が頻繁に起こる)、そして何物にも代えがたい3楽章(当時は南部牛追い唄の響きに似てるなあと思ってました。)、でも次が無い・・・・未完成の曲だと知りました。
だけど3楽章までで曲は充分に完結しているためなのでしょう、物足りなさは感じませんでした。
(作曲者はテ・デウムを4楽章にしちゃえばどうか?などと冗談を言っていたとか。本気だったとは思えない)

あれから40年・・・

1昨年ブルックナーの交響曲全集(0番も収録されている、しかも安い)をインバルのCDで買ったら、なんと9番に4楽章が付いていた!どこから湧いてきたのか?と思ったら、「最後の部分が欠落しているので、インバルが完成させた」みたいなことが書いてあった。
どんな曲かと思って聞いたら、それなりに盛り上がり主題も反復され悪くない曲と感じたけれども、あの恐るべき第3楽章の後に来るにはどうにも役不足。
大関→関脇→横綱と来ておきながら、最後の締めは小結だったという印象。ちょっと締まらない。
「4楽章は完成間近まで作ってしまったけど、今更手直しレベルでは横綱には敵わない、かと言って自分には作り直しをしている時間は残されていない、しょうがないので完成させるのはやめておこう」、とでも思ったのかもしれません。(最後の部分は私の勝手な想像です。完成する前に死去されたと書いてありました・・・)

それにしても強烈な名曲で、取り組んでいてもそのスケールの大きさに圧倒されます。しかも静かに終わるので聴いて下さる方に自分たちの感動を伝えることができるだろうか?とも心配になりますが、この曲を演奏できることに感謝して精進していこうと思っています。(T K)

写真:パブリック・ドメイン:From Wikimedia Commons, the free media repository
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Bruckner_final_years.jpg