ショパンはいつもひとり

2025.11.22

ショパンはいつもひとり

オーケストラでは、一般的にトロンボーンは3本で演奏されます。
これは、15世紀以降の教会音楽で聖歌隊とともに使われていた名残で、多くの作曲家が3本編成で作品を書いてきました。

ところが——ショパン(1810-1849)のオーケストラ作品では、なんと“1本”だけ。
今回演奏される《ピアノ協奏曲第2番》も(第1番も)、トロンボーンはひとりのみです。

なぜ1本なのか?
実は文献にも理由はほとんど残されておらず、いまも明確にはわかっていません。
しかし、ショパンが愛したプレイエル製のピアノ(1830年頃)と、近現代のピアノ(スタインウェイ(1911年製))の低音弦を見比べるとヒントが見えてきます。 ※画像提供:浜松市楽器博物館

実は、プレイエルの低音弦は、現代のピアノと比べると一回り以上細いのです。
つまり、ショパンの時代のピアノは、現代ほど重厚な低音が出ませんでした。
もし“ピアノの詩人”ショパンが、オーケストラにも当時のピアノと同じサウンドバランスを求めていたとしたら——
「トロンボーン3本では強すぎる」と感じて、ひとりにしてしまった可能性がありますね。

よく「ショパンはオーケストレーションが苦手」と言われることがありますが、単に彼が理想とする響きを求めたから、そう聴こえてしまうのかもしれませんね。

というわけで、普段は群れる(?)トロンボーンが今回は心細く孤軍奮闘しています。
あたたかい眼差しで見守っていただけたら嬉しいです。

Tb吹き〼