2020.07.07
ブラック・ジャック回想録 第2章 アキラさんと宮川家と浜松
そんな村木氏(村木氏については前章参照)から、団を通じて裏方としてオペラ制作への参加依頼を受けたことは、筆者としては誠に光栄であった。
だがそれは同時に、いばらの道を共に歩む仲間になる覚悟が要ることでもあった。
もちろん、浜響から裏方に関わったのは私だけではなく、これまでにアキラさんと交流のあった団員が何人か名乗りをあげてくれた。
実は浜松は、アキラさんのお父様で「宇宙戦艦ヤマト」など多くのヒット曲を生み出した宮川泰氏の時代から、宮川家とは関わりの深い土地だ。
宮川泰氏が生前、浜松市音楽文化顧問を務めていた時期があったことは、あまり知られていない事実である。
このため、宮川家と何らかの形で交流をしてきた市民は少なくない。
筆者自身も、オペラ制作以前からポップスオーケストラに参加したりアキラさんの公演を聴きに行ったり、直接ご本人とお話したりできたが、これもこういった土地柄のおかげである。
オペラに関わるようになってからはさらに機会が増え、浜響裏方メンバーはとくに、制作の参考のためにとアキラさんの他のオペラ公演等の舞台を観に、東京や千葉まで出張させてもらうこともでき、参加者で大いに盛り上がった。
なぜ我々は、アキラさんに魅せられるのか?
音楽が素晴らしいのはもちろんとして、筆者のような一般庶民とも同じ目線で気さくに話をしてくれる親しみやすさや、お話が面白いこともあるだろう。
でもたぶんそれだけでは、あれほどまでに村木氏を駆り立てなかったのではないか。
それはおそらく彼の、音楽に対するひたむきさ故ではないか、と筆者は考える。
音楽への飽くなき探求心、そして見つけたものを豊かな発想力で、分かりやすくみんなに伝えていく。決して驕らず、日々努力を惜しまない。
だからその結果生み出される音楽に、我々は感動し、その人柄に惹かれるのではないだろうか。
本当のところは、是非村木氏に語っていただきたい。
アキラさんの渾身のオペラ、絶対に成功させたい!と裏方メンバー誰もが思っていた。
しかしその後、「新作」を作るとはこれほど大変なことかと、我々は思い知ることになる。
(つづく)
写真:
歌劇「あしたの瞳」~もうひとつの未来@東京芸術劇場
宮川彬良presents『宇宙戦艦ヤマト2199』コンサート2015@舞浜アンフィシアター
での一コマ
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※ 続けて読まれたい方は下記リンクから。
連載 『 ブラック・ジャック回想録 』
▶ 1. ブラック・ジャック回想録 序章 (2020.06.14)
▶ 2. ブラック・ジャック回想録 第1章 立役者 (2020.06.27)
▶ 3. ブラック・ジャック回想録 第2章 アキラさんと宮川家と浜松 (2020.07.07)
▶ 4. ブラック・ジャック回想録 第3章 はましんコンサート (2020.07.16)
▶ 5. ブラック・ジャック回想録 第4章 Point of No Return (2020.07.28)
▶ 6. ブラック・ジャック回想録 第5章 奈落の底から (2020.08.19)
▶ 7. ブラック・ジャック回想録 第6章 歌合せ (2020.08.29)
▶ 8. ブラック・ジャック回想録 最終章 新たな夢へ (2020.10.15)