2023.03.01
一度は生演奏で聞いて頂きたいブルックナー
熱烈なファンも多い一方で「嫌いな作曲家ナンバー1」にも選ばれてしまうブルックナー。
私自身も、以前は苦手で、CDで何度聞いても好きにはなれず、敬遠してました。
そんな私がブルックナーの唯一無二の魅力に気づいたのは、今から十数年前、当時住んでいたドイツのハンブルクで、ブロムシュテット(指揮者)とハンブルク北ドイツ放送交響楽団による交響曲第4番のコンサートを聞いた時でした。一度くらいは生でブルックナーを聞いておこうくらいの気持ちで出かけたそのコンサートで、他の作曲家では体験したことのない響きと美しさに圧倒された私は、その後、生ブルックナーの感動を求めてヨーロッパ各地のコンサート情報を調べては現地に出向き、ラトル&ベルリンフィル、シャイー&ウィーンフィル、スクロバチェフスキ&ロンドンフィルなど、当時の人気コンビによる生演奏に触れて、ブルックナーの沼にハマって行きました。
そして、地元ハンブルクのアマチュアオーケストラがブルックナーを演奏することを知った私は、そのオケに入団し、古くは R.シュトラウス、プロコフィエフ、ストラヴィンスキーなどもステージに立ち、ヴァント&北ドイツ放送響の黄金コンビが多くの名演を行った伝統あるホールで、ブルックナーを演奏することも出来ました。その時に演奏した交響曲第6番の、中でも第2楽章は息をのむ美しさで、私のこれまでのオケ活動の中で最も感動的な瞬間です。
さらには、生地のアンスフェルデン、青少年時代を過ごし今も彼が眠るザンクト・フローリアン、音楽家として活動したリンツ、ウィーンに残るゆかりの地を巡る聖地巡礼までしてしまいました。
写真はその時に撮影したアンスフェルデンの教会で、ブルックナーの生家はこの裏手にあります。ユニークかつ偉大な交響曲を多数残した大作曲家の特異な人生は、オーストリアの片田舎のこの小さな村から始まりました。
こうしてブルックナーは私にとって大変思い入れの強い作曲家となったわけですが、もしあの時、生演奏を聞いていなければ、その魅力に気づくことも、ドイツのオケで演奏することも、聖地巡礼することも、そして今、これほど満たされた気持ちで毎日ブルックナーを弾いていることもなかっただろうと思います。
今回演奏する第9番は、演奏時間も比較的短く、美しい旋律や印象的なスケルツォもあって、馴染みやすい曲です。
ブルックナーほどに生演奏を聞くことで印象が変わる作曲家はいない、と私は思いますので、この機会にぜひ生ブルックナーを体験して頂きたいです!
(バイオリン TI)