別れの宴

2020.01.20

別れの宴

ときは中世、ところはイタリア・ヴェローナの街。

ここにモンタギューとキャピュレットという二つの名門がございました。
この両家の確執はことのほか根深く、顔を合わせれば喧嘩・流血沙汰という始末。

このいがみ合う両家に生まれ出たのが、互いに恋し合う二人の男女、
モンタギュー家のロミオと、キャピュレット家のジュリエットでございます。

両家の抗争の果てに、あろうことかロミオはジュリエットの従兄ティバルトを殺害!
これがもとで、遠くの街マンテュアへ追放の沙汰と相成ります。

愛するジュリエットを置いて、泣く泣く旅立つロミオ。
一方のジュリエットには、親が決めた結婚相手パリスとの挙式が迫る!

不運にも宿敵同士の両家に生まれついた、若き二人の恋物語。
果たして二人の運命やいかに!

これがかのシェイクスピアの名作、「ロミオとジュリエット」でございます。

浜響が次回定期で演奏いたしますのは、チャイコフスキー、プロコフィエフという二人の作曲家によって描かれる2つの「ロミオとジュリエット」。
皆々様にこの名作を十二分にお楽しみいただけますよう、団員一同、練習に相努める所存でございます。

さて

いまこの浜響からも、旅立つ若者が一人。
もちろん追放ではございません。

来たる者あれば去る者ありは、市民オーケストラの常。さりながら
心はロミオとの別れを悲しむジュリエットの如く:

「もう行っておしまいになるの?まだ夜も明けていないのに?
不安に苛立つあなたの耳を今ついざいたのは、夜鳴鳥(ナイチンゲール)であって
(朝を告げる)雲雀ではありません。」

旅立つ若者のかの地での幸いを願い、ささやかながら宴が催されたのでございます。

またいつか、どこかで
再び嬉しく相見える日がありますように。

出典:岩波文庫「ロミオとジューリエット」

(チェロパートの弁士)