祝福の音楽

2019.07.14

祝福の音楽

“蜜蜂の羽音は、世界を祝福する音”
“耳を澄ませば、こんなにも世界は音楽に満ちている”
―恩田陸『蜜蜂と遠雷』より

浜松で3年に一度開催される、浜松国際ピアノコンクール(浜コン)。
小説『蜜蜂と遠雷』で描かれる「芳ヶ江国際ピアノコンクール」は、この浜コンがモデルになっていると言われています。コンクールへのエントリーから本選までが、出場者、審査員、取材者、コンクールを支える人、出場者を見守る人、いろいろな視点から描かれ、地元民ながらまだ浜コンを一度も見たことのない(!)筆者のような者でも、「ああ国際ピアノコンクールってこういう感じなんだなあ」というのが想像できるような作品になっています。

今回「夢に追いかぜコンサート」で共演するジャン・チャクムルさんは、昨年開催された第10回浜コンの優勝者です。

『蜜蜂と遠雷』には、コンクールの出場者として風間塵という、特異なキャラクターの少年が登場します。
養蜂家の家で自然と共に育った彼は、天性の音楽的才能とピアノ演奏の技術で、コンクールの関係者たちにさまざまな形で刺激を与えていきます。「蜜蜂」や「遠雷」も直接的には彼に由来する言葉です。

「音楽を外の世界に連れ出すんだ」
彼にピアノを教えてくれた先生との約束を、ひたすらに守ろうとする塵。果たして彼は、コンクールの破壊者なのか、それとも・・・。

解説を書かれている編集者の方によると、チャクムルさんの浜コンでの演奏には、「風間塵的なるもの」を感じたとのこと。しかも、今回私たちと演奏するのは、風間塵が芳ヶ江国際ピアノコンクールの本選で弾きたかった、シューマンのピアノ協奏曲(写真は海老原先生のスコア)。

チャクムルさんが、私たちと一緒にどんな音楽を生み出してくれるのか、今からとても楽しみです!
『蜜蜂と遠雷』の物語がどんな結末を迎えるかは、ぜひ本を手に取ってご覧ください。

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